京の離宮(日本の心・現代日本写真全集)

1982年 集英社
桂離宮、仙洞御所、修学院離宮の三建築と庭園。作家 佐多稲子、写真評論家 重森弘淹 、渡辺好章が執筆。

-限りのない問い-より

写真家として歴史的なものを対象としている私にとって、被写体を認識するのは撮影という手段しかない。直感という甚だ客観性のないものを唯一の手懸りとして夢中で対象を追う行為を続けているだけで、出来上がった作品は、望んでいたものと隔たりがあり過ぎて自己嫌悪に陥る時がある。遂に出来たと喜んでも自惚れは二、三日にして消え去る。自惚れでも良いから長く続いてくれれば、その間は気が楽なのだが、どうもそうはいかない。カメラやフイルムの性能の限界だと自ら慰めても、写真の良し悪しは機能を乗り越えた世界にある。とてもそんな口実の入る余地はなさそうである。

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